「君は謙虚だね。けれど隠すことはないよ。俺も自覚はしているからね。そこでいい品が見つからないのなら自分で作ればいいと考えたんだが、どうせなら焼きたてを届けたいだろう? 城から運んでいては冷めてしまうから、ここで作らせてもらうことにしたんだ」
(もはや何からツッコめばいいかわからない! え、アレン様、お菓子作りが趣味だったの? いや、そんなはずないよね!?)
ゲームの情報を思い返しても、そんな要素は欠片もない。ひとまずイリーナは意識を飛ばしている料理長に駆け寄った。
「料理長、大丈夫ですか!? アレン様に酷いことされてませんか!?」
幼女に助け起こされた料理長は悔しそうに声を絞り出した。
「申し訳ありません、お嬢様! 私の完敗です。あれを、アレン様が作られたケーキをご覧下さい!」
イリーナは調理台の上に輝くホールケーキを見つけた。
「こ、これはっ!!」
まるで宝石が輝いているようだ。
クリームで丁寧にデコレーションされたケーキの上には、カットされたフルーツが美しく飾られている。苺は包丁で細工され、断面はまるで花のようだ。緑の果実とオレンジの果実は薄くスライスされ、巻くことでも花を表現していた。
「綺麗……」
思わず幼女も感激する美しさだ。もっと言えば、この世界では初めて見る繊細な細工だった。
「気に入ってもらえて嬉しいよ」
「アレン様、どこでこのような技術を?」
「基礎は城の料理人に教わったけれど、後は独学かな」
「どく、がく……」
今度はイリーナが料理長の隣で項垂れる。
異世界転生すること十七年。料理では誰にも負けないという自信があった。それは菓子作りも同じで、これまでイリーナの地位を脅かす者はいなかった。
しかし独学のアレンは一人で見たこともない細工を考えついたと言う。菓子作りに対するイリーナの自信は折られていた。
「こうなったら……」
隣でふらりと料理長の身体が揺れた。おぼつかない足取りで立つ彼は、とても思いつめた表情でゆっくりアレンへ近付こうとしている。
(まさか逆恨みして!?)
イリーナは料理長を止めるべく手を伸ばす。
「料理長、だめ――」
「アレン様、弟子にして下さい!」
幼女の腕は宙に浮いたままだ。
「貴方様の製菓技術に感銘を受けました。先ほどは素人などと、生意気なことを申し上げた自分が恥ずかしい。ぜひ弟子にしていただけませんか!?」
アレンはにこやかにその申し出を受け入れた。
「そうだね。君の技術が飛躍することはイリーナの食生活の向上にも繋がる。俺でよければ指導させてもらうよ」
こうしてまた一つアレンがバートリス家を訪れる理由ができてしまった。しかしイリーナにとっての問題はそこではない。ぷるぷると小さな肩が震え、言いたいことはたくさんある。
「弟子とられた-!」
幼女は泣いた。
(もはや何からツッコめばいいかわからない! え、アレン様、お菓子作りが趣味だったの? いや、そんなはずないよね!?)
ゲームの情報を思い返しても、そんな要素は欠片もない。ひとまずイリーナは意識を飛ばしている料理長に駆け寄った。
「料理長、大丈夫ですか!? アレン様に酷いことされてませんか!?」
幼女に助け起こされた料理長は悔しそうに声を絞り出した。
「申し訳ありません、お嬢様! 私の完敗です。あれを、アレン様が作られたケーキをご覧下さい!」
イリーナは調理台の上に輝くホールケーキを見つけた。
「こ、これはっ!!」
まるで宝石が輝いているようだ。
クリームで丁寧にデコレーションされたケーキの上には、カットされたフルーツが美しく飾られている。苺は包丁で細工され、断面はまるで花のようだ。緑の果実とオレンジの果実は薄くスライスされ、巻くことでも花を表現していた。
「綺麗……」
思わず幼女も感激する美しさだ。もっと言えば、この世界では初めて見る繊細な細工だった。
「気に入ってもらえて嬉しいよ」
「アレン様、どこでこのような技術を?」
「基礎は城の料理人に教わったけれど、後は独学かな」
「どく、がく……」
今度はイリーナが料理長の隣で項垂れる。
異世界転生すること十七年。料理では誰にも負けないという自信があった。それは菓子作りも同じで、これまでイリーナの地位を脅かす者はいなかった。
しかし独学のアレンは一人で見たこともない細工を考えついたと言う。菓子作りに対するイリーナの自信は折られていた。
「こうなったら……」
隣でふらりと料理長の身体が揺れた。おぼつかない足取りで立つ彼は、とても思いつめた表情でゆっくりアレンへ近付こうとしている。
(まさか逆恨みして!?)
イリーナは料理長を止めるべく手を伸ばす。
「料理長、だめ――」
「アレン様、弟子にして下さい!」
幼女の腕は宙に浮いたままだ。
「貴方様の製菓技術に感銘を受けました。先ほどは素人などと、生意気なことを申し上げた自分が恥ずかしい。ぜひ弟子にしていただけませんか!?」
アレンはにこやかにその申し出を受け入れた。
「そうだね。君の技術が飛躍することはイリーナの食生活の向上にも繋がる。俺でよければ指導させてもらうよ」
こうしてまた一つアレンがバートリス家を訪れる理由ができてしまった。しかしイリーナにとっての問題はそこではない。ぷるぷると小さな肩が震え、言いたいことはたくさんある。
「弟子とられた-!」
幼女は泣いた。



