その日、幼女化したイリーナは上機嫌で厨房へと向かっていた。
「気分転換にクッキーでも焼こうかな。でもケーキもいいよね」
かつて本当の幼女だった頃、道場破りの勢いで厨房を訪ねてから料理長とは師弟のような関係を築いている。新しいレシピを教えることもあり、いつでも自由に使って構わないと許可をもらっていた。ちなみに幼女が師である。
しかし到着した厨房はいつもと違って騒がしい。
「料理長がまた負けたって?」
「あの人ただでさえ昔幼女に負けて落ち込んでたのに!」
(あれ? なんか騒がしい?)
数日前にも同じことを思った気がする。
(あの時はアレン様が訪ねてきて大変だったけど、さすがにここは厨房だしね)
考え過ぎだとイリーナはいつも通り顔を出した。そして驚愕させられる。
「やあ、イリーナ」
「ひぃぃぃぃぃ!?」
いつもは「ひっ」とまだ控えめな反応をしているが、今回は遠慮している暇がなかった。何しろ自宅の厨房にまるで料理人の如く白いコックコートを着たアレンがいたのだ。イリーナも子供用エプロンを着ているが、本格さではアレンに負けている。
「なっ、えっ、アレン様、道に迷ったんですか!?」
「そんなはずないだろう。何度通っていると思っているんだ」
「それはそれで問題なんですけど、その格好! しかも料理長が物凄く落ち込んでる!?」
項垂れる料理長は全身から落ち込んでいますという空気を醸している。
アレンは服装は違えど、いつも通り笑顔で答えた。
「少し厨房を借りたくてね。彼が、いくら王子殿下とはいえ俺の城に素人を入れるわけにはいかない。使わせてほしければ俺を納得させてみろと言うものだから、料理勝負をしたんだ。何を作っても構わないと言われたから、ケーキを作らせてもらったよ」
「うちで何してるんですか!?」
「そうなんだイリーナ、聞いてくれ。これは大変な問題でね。最近手土産の菓子に変化がないとは思わないか?」
「いえ別に」
真剣な顔で言われたが、イリーナは即答していた。
アレンは昔から侯爵邸を訪れる際は美味しそうな菓子を持参してくれる。それは幼い子供が好みそうな動物の形をしたクッキーであったり、甘いチョコレートであったり、イリーナが成長するにつれ美しい造形の菓子へと変わっていった。どれも名店の品ばかりである。
「気分転換にクッキーでも焼こうかな。でもケーキもいいよね」
かつて本当の幼女だった頃、道場破りの勢いで厨房を訪ねてから料理長とは師弟のような関係を築いている。新しいレシピを教えることもあり、いつでも自由に使って構わないと許可をもらっていた。ちなみに幼女が師である。
しかし到着した厨房はいつもと違って騒がしい。
「料理長がまた負けたって?」
「あの人ただでさえ昔幼女に負けて落ち込んでたのに!」
(あれ? なんか騒がしい?)
数日前にも同じことを思った気がする。
(あの時はアレン様が訪ねてきて大変だったけど、さすがにここは厨房だしね)
考え過ぎだとイリーナはいつも通り顔を出した。そして驚愕させられる。
「やあ、イリーナ」
「ひぃぃぃぃぃ!?」
いつもは「ひっ」とまだ控えめな反応をしているが、今回は遠慮している暇がなかった。何しろ自宅の厨房にまるで料理人の如く白いコックコートを着たアレンがいたのだ。イリーナも子供用エプロンを着ているが、本格さではアレンに負けている。
「なっ、えっ、アレン様、道に迷ったんですか!?」
「そんなはずないだろう。何度通っていると思っているんだ」
「それはそれで問題なんですけど、その格好! しかも料理長が物凄く落ち込んでる!?」
項垂れる料理長は全身から落ち込んでいますという空気を醸している。
アレンは服装は違えど、いつも通り笑顔で答えた。
「少し厨房を借りたくてね。彼が、いくら王子殿下とはいえ俺の城に素人を入れるわけにはいかない。使わせてほしければ俺を納得させてみろと言うものだから、料理勝負をしたんだ。何を作っても構わないと言われたから、ケーキを作らせてもらったよ」
「うちで何してるんですか!?」
「そうなんだイリーナ、聞いてくれ。これは大変な問題でね。最近手土産の菓子に変化がないとは思わないか?」
「いえ別に」
真剣な顔で言われたが、イリーナは即答していた。
アレンは昔から侯爵邸を訪れる際は美味しそうな菓子を持参してくれる。それは幼い子供が好みそうな動物の形をしたクッキーであったり、甘いチョコレートであったり、イリーナが成長するにつれ美しい造形の菓子へと変わっていった。どれも名店の品ばかりである。



