「ほ、本当なの!?」

「うん。愛美さんと2人で会ったのはあの日が初めてで、あれからはもちろん会ってない。」

「嘘…信じられない……」



僕だってまだどこか信じられないくらいだ。
だけど、僕の心は弾んでいた。
まるで、初恋を経験したばかりの中学生みたいに。



「翔子…僕、はっきり言うよ。
愛美さんとはこれ以上付き合えないって。」

「え…潤、それって……」

僕をみつめる翔子の大きな瞳に、どんどん涙が溢れて来て…



それを見ていたら、なんだか僕も胸がいっぱいになって、何も言えなくなってしまって…
だから、黙って、翔子の体を抱き締めた。



こんなところで、何やってるんだ。
心のどこかではそんなことを思ってたけど、つまらない理性は熱い感情に押しやられた。



僕にこんな情熱があったことが、自分でも意外だった。
だけど、僕の胸に感じるこの温もりを、僕はもう離したくない。



「翔子、僕と付き合って欲しい。」

「潤…ほ、本当なの?」

「うん、僕、ようやくわかったんだ。
僕は、ずっと君が好きだったんだって。
僕は鈍いから、君のことはただの幼馴染だと思ってた。
だけど、違った。」

「潤……」

今日だけは、僕はヒーローだ。
地味だし、カッコよくはないけれど、翔子を抱き締めて愛の告白をして…
あぁ、やっぱり信じられない。
僕にこんな勇気があったなんて。



無駄にしてしまった十年余りの時を取り戻す程の熱い恋愛は、きっと僕には出来ないけれど、これからは翔子のことを大切な女性として愛していきたいと思う。



翔子を抱き締めながら、僕は心の中でそう想った。