訊かれたくなかったことを訊かれてしまった。
どうしようかと少しだけ迷ったけれど、しばらくしたら心は決まった。
だって、彼氏のことも打ち明けたんだもの。
もうこの際、なんでも話そう。



「そうなんだ…でも、どうして?」

それは私にとっては辛い質問だった。
でも、もう十年以上も前の話だし、乗り越えるのに良いチャンスだ。



「あのね…
潤、覚えてるかな?
高3のバレンタインデー…」

「高3?えらく昔の話だな。
あ……そういえば、あの時、チョコくれなかったよな。」

「え?そ、それは……」

潤、そんな昔のこと、覚えてたんだ。
一応、渡す準備はしてたんだ。
もしも、紗夜の告白がうまくいかなかったら、渡そうと思ってた。



友達の失敗を祈るなんて最低だけど…
私は潤が好きだったから、紗夜とはうまくいかないでほしかった。
なのに……



「潤、まさか忘れてないよね。紗夜のこと…」

「紗夜…あぁ、髪の長い子だよね。
苗字、なんだっけ…」



髪の長い子…
しばらく付き合ってたくせに、なんだか酷い言い方だ。
まるで、あんまり知らない人みたいに言って…



「潤…酷いよ。
彼女をそんな風に。」

「彼女?誰が?」

「誰って…紗夜だよ。」

「だから、あの髪の長い子だろ?」

潤の言葉になんだかとてもイライラした。