潤は楽しそうにしてるけど…
時折、困ったような顔をする。
きっと、何か話したいことがあるんだ。
だけど、話すきっかけが掴めない。
潤は、子供の頃から口下手だから。



だから、私の方からきっかけを作ってあげた。
きっと、良い話じゃない。
それはなんとなく感じてた。
聞かずに済むならそうしたいけど、そんなことをしたら潤が困るはずだから。



やはり思った通りだった。
潤は言った。
少し強張った顔をして。



「あ、あのさ。
彼には僕のこと、話したんだよね?」



まさか、そんなことを訊かれるとは思ってなかったから、酷く動揺してしまった。



どういうことだろう?
どうして彼のことなんか…



(まさか……)



まさか、潤は私が嘘を吐いてることに気付いて、鎌をかけてるの?
潤は昔から妙に勘が鋭いところがある。
だから、私の嘘に気付いた…?



「翔子…どうかしたのか?」

潤が私の顔をのぞきこむ。



もうおしまいだ。
もう、嘘は吐けない。
こんなに苦しい想いをするなら、いっそ、すべてをぶちまけた方がマシだ。



「ごめん!」

私は両手を合わせ、深く頭を下げた。



「ごめんって……何が?」

胸がいっぱいになって、涙が込み上げてきた。
こんなことで泣いたらだめ。
痛い奴だと思われる。
そう思うのに、どうしても止めることが出来なかった。