「おひとり様ですか?」

「連れが来てるはずなんです。」

答えてるうちに、私は彼の姿をみつけた。
彼は呑気に手を振っている。
私の苦しい胸の内なんて、まるで知らずに。



私は気合いを込め、彼の席へ歩き始めた。
そして、なんともない振りをして、彼の向かいの席に座った。



「愛美、来てくれてありがとう。」

ありがとうもないもんだ。
来なかったら家に行くって、半ば脅迫みたいなことまで言ったくせに。



私は温かいコーヒーを頼んだ。



「もう晩御飯は食べたの?
だったら、甘いものでも食べたら?」

私は首を振り、コーヒーをすすった。



「あんまり時間がないから、話なら手短にね。」

「なんだよ。えらく一方的だな。
しつこいかもしれないけど、俺はまだ納得してないから。」

「納得も何もないでしょう?
私、はっきり言ったよね。
あなたへの愛情がなくなったって。
だったら、別れるしかないじゃない。」

「だから!俺も言ったよな。
そんな勝手なこと、納得出来ないって。
それまで何のトラブルもなかったのに、いきなり愛情が無くなったなんて言われても、はい、そうですかって言えるわけないだろ?
俺は今も変わらず、愛美のことを愛してるんだから!」

亮太の真っ直ぐな瞳が辛くて、私はそっと目を伏せた。



なんでこんなことになったんだろう。
私はやっとの想いで亮太と別れたのに。
また同じことを繰り返さないといけないなんて、辛過ぎる。



「愛美!」



どうしたら良いんだろう?
私は悩みに悩んで、一番正しいと思うことを実行した。
そして、それがうまくいったと思っていたら、またこんなことになって…



(本当に、もうどうしたら良いのかわからない…
誰か、助けて……)