(意外と良い人なのかもしれない…)



家に帰ってソファーに腰掛け、ふと、さっきのことに思いを馳せた。



映画は、意外にも面白かった。
期待なんて全くなかったけど、それが却って良かったのか、本当に楽しかった。
今まで、映画ってあんまり興味がなかったけれど、映画が好きになりそうなくらい、面白かった。
会場も満席じゃなかった。
私なら、きっとそんな映画は見ないだろう。
宣伝や客入りでしか、判断出来ない。
広瀬さんはさすがに映画ファンだと思えた。



映画の後は、広瀬さんとランチに行って…
お店はあまりご存知なさそうだったから、私が適当に選んだ。
初めてのお店だったけど、大正解だった。
家庭的な良い雰囲気だったし、なにより、パスタもドルチェもとても美味しかった。



広瀬さんは、間違っても話術がうまいっていうタイプではないけれど、素直だし、純朴な感じがして、話しててとてもリラックス出来た。
なんでも残さず食べるし、食べ方も綺麗だ。



私のことを「愛美さん」と呼ぶ時は、とても緊張した様子で、なんだか可愛いと思ってしまった程だった。
私のことを名前で呼ぶだけで、あんなに緊張するなんて…



思い出すと、私の顔に笑みが浮かんだ。



(彼となら、うまくいくかもしれない……)