あの時のことは、今でもはっきりと覚えてる。
あれからもう何年も経ったのに、少しも色褪せることなく。



あの時、私は紗夜に何も言えなかった。



だって…私が答えたことは全部本当のことで…
私と潤の間には、幼馴染だという繋がりしか無くて…
だから、紗夜に何かを言うことは出来なかった。



ただ…
私は、潤に対して幼馴染以上の気持ちを持っていたけれど、そのことは潤には言えるはずなくて…
もし話して、今の関係が壊れたら…って思ったら、怖くて話せるわけがなかった。



そうだよね…
あの頃、私が潤に本心を告げてたら、きっと、気まずくなってたよね。



でも、そうでなくても、結局は気まずくなったんだ。
だって、紗夜の告白がうまくいって、潤と紗夜は付き合うことになったんだから。



さすがに私もショックが大きくて、とてもじゃないけど、なんともないふりなんて出来なくて…
それで、潤とも紗夜とも疎遠になってしまったんだ。
幸い、それからすぐに私達は卒業して、違う大学に進学したけど、連絡は一度も取らなかった。



あれから、バレンタインデーは私のトラウマとなった。
バレンタインデーが近付くと、気分が滅入って来る。
好きだったチョコレートの香りさえもが、苦手になってしまった。