「本当に面白かったです。
正直言って、今日の映画がSFファンタジーだと聞いた時、多分よくわからないだろうなぁって思ってたんです。
でも、そんなこと全然なくて……」

愛美さんは、小さなイタリアンのお店に僕を連れて行った。
パスタが食べたかったそうだ。
中年の夫婦が営む家庭的な店だった。



僕は正直言って、パスタもどうでも良かったんだけど、でも、意外と美味しくて…
食べてるうちに、昂っていた気持ちも少しずつ、落ち着いていた。



翔子に彼氏がいたって、何の不思議もないことだ。
僕だって、今日は愛美さんと一緒だった。



馬鹿馬鹿しい。
気にするようなことじゃないのに…



「広瀬さんは、SFとかファンタジーがお好きなんですか?」

「え?えっと…は、はい。
嫌いではないです。
い、いや…特に好きってわけでは…」

僕は、言い訳がましく何を言ってるんだ。

好きじゃないか、そのジャンルが。



きっと、翔子の影響で好きになったことが引っかかってるんだ。
僕はなんて小さな男なんだろう。
こんなことで意地を張ったって、何がどうなるっていうんだ。



「……好きです。」

「え?」

「SFやファンタジーが、実は好きです。」

「……やっぱり。」

愛美さんがくすりと笑った。