ぱちり、月島さんの瞳が瞬いた。

「……あ、うん、そ……うだね……?」

 かと思えば、きょろり、目玉を右に流し、またきょろり、目玉を左に戻し、そして最後に中央下へと目線を落とした。
 何か、聞いてはいけないことを聞いてしまったのか? そう思わずにはいられないほどの彼女の挙動不審っぷりに何故だか抱いてしまった罪悪感。とはいえ、いつも勉強会が終わったら樋爪は月島さんを家まで送っているようだし、樋爪が来るまでは樋爪の代わりを務めた方が良さそうだ。

「……ん……っえ!?」
「え?」

 今、何時だ?
 その思いのままに携帯を取り出して電源ボタンを押せば、明るく照らされたデイスプレイに表示されたメッセージアプリからのポップアップ。差出人は雨水悠真。いつもくだらないおもしろ画像しか送ってこないから、きっと今回もそうだろうと何気なくアプリを開いて、見て、思わず漏れた声。咄嗟に手で口元を押さえるも、既に漏れた声はなかったことにはならない。

「だい、じょうぶ……?」

 遠慮がちに、けれど心配をしてくれる月島さんの優しさにキュンとしながらも、脳内は今しがた見たもので占められている。
 寄り添う男女の後ろ姿。女の方は完全に顔は見えていないけれど、男の方は横顔が見えて、しかも笑っていた。それが、全く知らない男女だったならば、「リア充かよくそ」で終わるのだけれど、残念ながら男の方を俺は知っている。というより、悠真も男の方を知っているから、これを俺に送りつけてきたのだろう。
 携帯の中で、どこかの高校の制服を着た女と、その女に笑いかける樋爪将冴。それの下に続けて送られてきていた『なぁこれやばくね?』というメッセージ。小さく記された受信時刻は今より一時間ほど前だった。

「だっ……だい、じょうぶ……ごめん、大きい声出して」

 なぁ悠真。「やばい」なんて一言じゃ済まされないくらいにはやべぇよ、これ。