しかし高嶺の花である彼女とは、幼馴染みだとか、ずっと同じクラスだったとか、隣の席だったとか、何かしら接点があって、彼女とも友達で相談を受けて、という手順を踏んだわけではない。

「なぁ~おれも行っちゃだめか? おれも月島さんとお近づきになりてぇ~」
「やめとけ殺されるぞ」
「だよなぁ」

 彼女に恋をしたのはきっと、必然だった。けれど、(くだん)の彼氏、樋爪将冴に滅されず彼女と言葉を交わせるようになれたのは、ただの偶然だ。

「俺もう行くわ、じゃあな」
「お~、がんばれぇ~」

 からり、ころり。
 口の中で飴を転がしながら、ぶんぶんと手をふるそいつに苦笑しつつ、教室を出た。