全身全霊、きみが好きだ!


「噂を信じて欲しくねぇ相手が出来たら、そいつには本当のことを言う」
「……ほぉ、」
「だから今日俺は図書館に行かなかった。清花がお前に話すって決めたからな」
「え、あ、だから、公園によりみ」
「なぁ」
「へっ?」
「理解したか?」
「え?ああ、俺に話そうと思ってく」
「違ぇよ馬鹿」
「ば!?」
「清花がお前に話そうと思った、その理由だよくそカス」
「理由……?」
「言ったろ」
「……」
「誤解、されたくねぇんだよ。お前にはな」

 誤解、されたくない、俺には。
 樋爪が吐き出した言葉を脳内でリピートして、何故どうしてを考えて、自分にとってどうしようもなく都合のいい答えが導き出された瞬間、ばくりと心臓がはねて、何の特徴もない平々凡々な顔面が一気に熱くなる。
 うあ、え、い、へ、と何とも情けない音しか出てこない口は、はくはくと動くだけで会話をするという機能が完全にバグってしまっているみたいだ。

「男がどうとか女がどうとか言うつもりはねぇけど、まぁ桜花(いわ)く、女ってのは告られたい(いわれたい)生き物らしいからよ」
「へ、え……?」
「この俺がこれだけお膳立てしてやってんだ。(おとこ)()せれるよなァ?」

 ずいっと眼前につめ寄られて、にたぁと口角をゆっくりあげられる。ひぃっと飛び出そうになった悲鳴を噛み砕きながら、名産品の赤い牛が如く俺は首を縦にふった。