全身全霊、きみが好きだ!


 自分の顔が、すんっとなったのが分かった。しかし樋爪にとっちゃそんなこと、きっとどうでもいいことなのだろう。

「清花は、あんな見てくれだから、小学校に上がる前から結構ヤバめの奴にすぐ付きまとわれたりしててよ」
「え、あ、うん?」
「だから俺が護ってやんねぇとって思って、常にそばに張り付いてて」
「お、おお、」
「まぁ名字違ぇし、家のゴタゴタをぺらぺら吐き散らすほど馬鹿でもねぇし、俺らが双子だとか赤ん坊の頃ならまだしも成長してけば分かるわけねぇし、端から見たら他人でしかない俺らが四六時中一緒にいりゃそう見られるんのも仕方ねぇ」
「まぁ、うん」
「で、だ」
「おう」
「清花と話し合ってその噂を利用することにした。っつても否定も肯定もしねぇってだけだけどな。でもそのおかげで清花に付きまとう奴とか変な手紙やプレゼントを送ってくる奴は激減した。ゼロではないにせよ上々だろ」
「え何そんな付けまわされてんの? 月島さん」
「多いときは六人同時にストーカーされてたな」
「ま、え? マジで?」

 こんな嘘ついて誰が得すんだよ。
 そう言って、にたりと口端を釣り上げた樋爪は、トン、トン、と人差し指でテーブルを軽くノックしたあと、「海鋒」とまた俺を呼んだ。

「お前、清花のこと好きだろ。わりとマジで」
「え、なっ、べっ、つに、そん、」
「誤魔化すの下手すぎだろ」
「っ」
「話を少し戻すけどな、噂を利用するって決めたときに、ひとつ特別なルールを作った」
「お、おう、いきなりだな……いつもいつも」

 こちとらお前みたいにメンタル鋼で出来てねぇんだぞ!
 言いたいけど言ったあとが怖いからなぁと吐き出せなかった言葉を飲み込みながら、樋爪からの続きを待っていれば、樋爪は何だかよく分からない表情でじっと俺の目を見た。