あぁあああっ! と脳内でもうひとりの俺が膝を付き、両手で顔面を覆い、天を仰ぐのを他人事のように眺めながら、「あ、そうなんだぁ~」と彼女と微笑みあった。
 月島さんの周りに花が咲いてる、可愛い~。
 なんて呑気にほんわかしていたら、「ぽやってんじゃねぇよ」と後頭部をまぁまぁの威力で叩かれた。解せぬ。

「ちょっと、何で海鋒くん叩くの」
「顔がキモかった」
「キモくないでしょ! ひどいこと言わないで!」

 月島さんの優しさにキュンとしつつも、違う見方をすればナチュラルにイチャついて見えるそれに血涙が出そうだ。しかしそんな俺の心境など知らぬとばかりに、樋爪は茶色い家へと足を向けた。

「俺あれ取ってくっから、お前んとこで茶ァでも出しとけ」
「あ、うん。分かった」
「一応言っとくが、応接間に通せよ? 部屋に入れんじゃねぇぞ」
「わっ、分かってるよ!」
「は。どうだか」
「いいから早く取ってきて!」
「へいへい」

 牽制は忘れないんだな。
 部屋に入れんのは俺だけなんだよマウントに心が粉々になるのを感じながら、促されるままに月島さんお宅へお邪魔させてもらった。