当たり前のように等間隔で設置された防犯カメラ。ぐるりと敷地全てを囲っているであろう背の高い鉄柵の先端は全て鋭利な(やじり)のようになっていてひどく好戦的だ。ここは、要塞か何かかと目を丸くしていれば、樋爪は門のようになっているところで何だかよく分からない機械に手をかざして門を開き、中へ入れと顎で示す。
 あ、これ詰んだ。泣きそうになりながら、でも言うこときけばワンチャン生還出来るかもしれないしとぷるぷる小刻みに震えている足を必死に動かして門をくぐれば、そこには右に白い壁の一軒家、左には茶色い壁の一軒家が建っていて、ふたつの家の間には学校にあるのよりもふた回りくらい大きなプールがあった。
 樋爪に、「家」とただ一言で説明されたが、それだけで何もかもを汲み取れるほど俺のIQは高くない。きみの彼氏さんが怖いよ助けてと樋爪のあとをトコトコとポメラニアンやチワワもびっくりな愛らしさを垂れ流しながら歩いていく月島さんに視線で助けを乞えば、さすが学校一の美人、「あ、ごめんね」と申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

「こっちの白い方が私の家で、あっちの茶色い方が将冴の家だよ」

 っ違う! そうじゃない、そうじゃないんだよ月島さん! どっちがどっちなの? なんて問いかけはしてないんだよ月島さん! でもそんなきみも好きだ! ちくしょう!