「っぁあ~終わった終わったぁ~」

 鳴り響いたチャイムを合図に、回収されていく紙キレ。一言二言吐き出した監督係だった教師は、紙束片手に足早に教室をあとにした。

「終わってねぇよ。まだ一日目だろ。ばぁか」

 スクールバックを肩にかけ、ブレザーのポケットに両手を突っ込んだまま駆け寄ってきた友人、雨水(あまみ)悠真(ゆうしん)へ嘲笑を吐き出せば、「やなこと言うなよぉ~」とそいつは項垂れた。
 期末試験。学生ならば避けて通れないそれは、残念ながら明日も明後日も俺らを待ち受けている。

「あぁ~サッカーしてぇ~マネに癒されてぇ~」
「試験期間くらい勉強しろ」
「へぇへぇ。どうせお前はあれだろ? 月島(つきしま)さんとお勉強、だろ?」
「ん」
「てか、今回、長くね? お前いつもは一ヶ月あれば立ち直ってたじゃん。てか別のコ好きになってんじゃん」
「……うっせぇ」
「だってよぉ、早いとこ諦めねぇとさぁ、やべぇんじゃねぇの? 今までは普通にさ、違う学校の奴とかだったけど、月島さんの彼氏、あいつだろ?」
「……」
「なぁんか先週も喧嘩して警察沙汰になって生徒指導に呼ばれてたよな。向こうが先に手ぇ出してきたっつって正当防衛だからって不処分になってたけど」

 ごそりと自身の左ポケットを漁り、棒のついた飴を取り出した悠真は、ぺりぺりと外装を剥がしながら、まるで他人事のように、それこそ何でもないことのようにけらりと笑う。

「……だな」
「何であんなのと付き合ってんのかね、月島さんは」
「さぁな」

 そんなの、俺だって知りたいわ。