「アリギュラ様! 我が君、アリギュラ様!」

 聖教会、ローナ聖堂。

 その中でも特に立派な部屋の扉を、必死の形相で叩くものがひとり。

 聖女の世話係にして、光の剣の預かり手――そして、異世界アーク・ゴルドにおいては魔王アリギュラの腹心の部下であった知将、メリフェトスである。

 詰襟の上からでもわかる鍛え上げられた体に、気品と生真面目さが窺える凛とした面差し。知的な青紫色の瞳も相まって、10人が見れば10人がほうと溜息を吐く美形だ。

 そんな彼が、扉に縋り付いて叫ぶ姿はなかなかシュールである。

 ぴくりとも開く気配のない扉に、メリフェトスはなおも訴える。