その唇が、柔らかな感触で塞がれた。




 アリギュラは、ぱちくりと瞬きをする。驚くほど近くに、メリフェトスの顔がある。瞼は固く閉ざされていて、青紫色の瞳を覗くことはできない。切りそろえられた彼の髪が頬にあたり、なんだかそれがこそばゆい。

(まつ毛、長かったんだな……)

 どうでもいい感想を抱いてから、アリギュラははたと気づく。

 なんだ、これ。なんだ、この状況。

 なんで自分は、メリフェトスと口付けなどしているのだ!?

「……ご無礼、お許しください。我が君」

 ちゅっと。耳をふさぎたくなるようなリップ音を立てて、メリフェトスが離れる。