一緒に、異界の人間を滅ぼそう。

 かつてアーク・ゴルドを救った、勇者カイバーン。その彼が、アリギュラに手を伸ばす。

 その手を、アリギュラはじっと見つめた。

 なるほど。理にかなった提案ではある。

 人間に嫌気が差したカイバーンは、人間を滅ぼしたい。聖女として召喚されたアリギュラは、もとは魔族で人間に思い入れがない。

 アリギュラが一応は聖女としての役目を果たしてきたのは、そうしないと、この世界に完全に魂が定着しないからだ。事情を知らないカイバーンにしてみれば、元魔王のアリギュラを味方に引き込んだほうが効率もいいだろう。

 しかし、まあ。勇者が人間を滅ぼしたいとくるとは。

 アーク・ゴルドでの日々が、まざまざと瞼の裏に思い出される。

 魔族の中には、人間に強い憎しみや怒りを抱く者もたくさんいた。そのひとりは、ほかでもないメリフェトスである。