「案ずるな。わらわは一言も迷惑とは言っていないぞ。なにせ、わらわの親友はとてもかわゆいからなっ」

「かわゆいっ!? 嬉しいですわっ、アリギュラ様!」

 嬉しそうに、キャロラインがぎゅーとアリギュラの腕にくっつく。ジーク王子は正反対に、「うっ」と息をのんで悔しそうにする。その隣では、もう一人の金髪頭が腹を抱えて笑っていた。

「ひーっ、ひーっ、ひーっ……! あ、兄上、ざまあない……いえ、いい気味ですね! 婚約者をまさか女性に奪われるなんて」

「……おい、ルーカス。言い直した意味が全くないくらい、心の声が駄々洩れているよ。あと、やめなさい。淑女(レディ)の前で、そんなはしたない笑い方は」

「いつも清廉潔白、完璧超人気取っている兄上がやり込められているのが、超絶いい眺めなんですよ。はーあ。今日は上手い茶が飲めそうです」

 甘く整ったベビーフェイスに似合わず、王太子であるジークにとんでも発言をかましているこの人物。エルノア国の第二王子、ルーカスである。

 ひーひー笑う第二王子に、アリギュラは呆れて肩を竦めた。