むむむ。

 アリギュラは、困惑していた。



「アリギュラ様―――!」

 ふりふりと手、そしてドリル型の縦ロールを揺らし、野原を駆けてくる影がひとり。スカートをなびかせて走ってきたその人物は、メリフェトスに手を引かれて馬車を降りたアリギュラにふわりと飛びついた。

「お待ちしていました! お会いできてうれしいですわー!」

「ひっつくな、キャロライン。ドリルがびしばしと当たるんだが!?」

 ピクニック用の軽めのドレスに身を包み、幸せそうにすりすりと頬ずりしてくるキャロライン。それをぐいぐい押していると、キャロラインの後ろからもう一人の声が飛んできた。

「ご機嫌麗しゅう、聖女様。……キャシー、聖女様もお困りみたいだし、戻っておいで?」

 その声にアリギュラはにやりと笑った。ひょいとキャロラインをどかす。そして、きらきら笑顔に若干寂しさを滲ませるジーク王子をにまにまと見上げた。