魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです


 チビ悪魔の途方もない構想に、『彼』はぽかんと口を開けるしかない。けれどもなぜか、このチビ悪魔なら出来るかもしれない。根拠はないが、そこはかとなく予感がする。

 目を丸くしてまじまじと眺めていると、チビ悪魔がしゃがんで『彼』と視線の高さを合わせた。

「して。おぬし、名は何と申す?」

「私は……」

 返事に窮して、『彼』は目を泳がせた。ほかの悪魔に漏れず、もう長い間『彼』はひとりで行動してきた。かつて呼ばれた名も、もう覚えていない。仕方なく、襲ってきた人間たちが話していた、懸賞首としての名を『彼』は答える。

 するとチビ悪魔は、くいと眉を上げた。

「そんな名前捨ててしまえ。仕方ないな。手下第一号の記念に、わらわがつけてやるか……」

 腕を組んで、チビ悪魔は考え込む。真剣に熟考することしばらくのうち、チビ悪魔はぽんと手を叩いて表情を明るくした。

「そうじゃ。メリフェトス。メリフェトスはどうだ?」

「メリ、フェトス……?」

「伝説の魔王の参謀が、そんな名前だったはずじゃ。……いや、使い魔のカラスだったか? それともペットの犬??」

 自信満々にうなづいたチビ悪魔だったが、途中から何やらごにょごにょと言葉を濁す。なんであれ『彼』に異存はない。