「人間どもが徒党を組んで力を伸ばしているというなら、我ら悪魔も群れをつくればいい。悪魔だけじゃない。スライムもオークも鬼もアンデットも吸血鬼も。人間に狩られてきた魔族すべてが、手を組み反撃する! おぬしとわらわの協定は、その第一歩じゃ!」
ふふんと鼻を鳴らし、得意げにチビ悪魔は笑う。あまりに壮大すぎる未来図に、『彼』はしばし言葉を無くした。やがて我に返った『彼』は、戸惑いつつ首を振った。
「種を越えて魔族が手を組むなど不可能です。魔族は基本、同種以外の言葉には耳を傾けません。しかも、人間に対抗しうる大群を統率することなど……」
「王の言葉になら、耳を貸すだろう?」
けろりとした顔で、チビ悪魔がのたまう。
魔族の王。それは遠い昔。天界との全面戦争で滅亡の危機に立たされた魔界に彗星の如く現れ、すべての魔族の上に君臨し救ったと言われる伝説の存在。それになると、このちびっ子はのたまうのか。
唖然とする『彼』に、チビ悪魔はふふんと不敵に笑った。
「ただの軍団ではない。われらが目指すの国じゃ。もう誰も人間に狩られない。もう誰も、魔族だからという理由で犠牲にならない。そのための国をわらわが作ってやる」
「そんな、無茶な……」
「無茶もへったくれもあるか。それに、おぬしも他人事ではないぞ。今日からおぬしはわらわの手下。記念すべき第一号の臣下だからな」


