「ていっ」
掛け声とともに、チビ悪魔が足をけり上げる。そのつま先は見事に『彼』の顎にクリーンヒット。まともに食らってしまった『彼』は、思い切り後ろに倒れこむ。ぎりぎり受け身をとって頭を地面に打ち付けずに済んだが、代わりに、再び頭をチビ悪魔に踏まれた。
「さっきから聞いていれば、おぬしはぐちぐち、ぐちぐちと。なんじゃ! 一回死にかけたくらいで湿っぽい! おぬしも悪魔なら、少しは根性みせぬか!」
「すびませんね」
ぐりぐりと地面に押し付けられながら、『彼』は口をへの字にする。これでも苦労してきたんだとか、だったらお前も一度死にかけてみろとか色々と言いたいことはあったが、通じる相手とも思えない。だから彼は、ふて腐れつつ文句をすべて呑みこんだ。
……すると、ふと、頭の上から足がなくなった。
「おぬし、わらわの手下になれ。わらわがおぬしを、人間どもから守ってやる」
「…………はい?」
突拍子もない提案に、思わず『彼』は痛む身体を引き摺り起き上がる。すると、らんらんと輝く真っ赤な瞳と視線が交わった。


