これっぽっちも悪びれる様子のないチビ悪魔に、『彼』はふいと目を逸らす。けれどもチビ悪魔は、赤い瞳でじーっと『彼』を見つめた。
そして、尋ねた。
「して。なぜ、おぬしは目をつけられた」
「…………」
ざあと風が吹き抜け、木々を揺らす。その風の冷たさを頬に感じながら、『彼』は唇を噛み締めた。
「理由など、ないのでございます」
噛み締めるように、呪いを吐くように。唇を歪めて、『彼』は答える。
「自分たちと違うから。気持ち悪いから。得体が知れないから。恐ろしいから。……経験値を積むために殺す。そのことに良心を痛めないための理由をひとつ見つけられればそれでいい。どんな大義名分を掲げようが、連中の根底はその程度です」
ぎゅっと握りしめた手の、緑の鱗が視界に入る。
顔の半分と身体を覆う、蛇のような鱗。この見た目のせいで『彼』は何度も。何度も何度も何度も。命を狙われてきた。


