(なんだ、この子供は)
べたりと頬を地面に押し付けられたまま、『彼』は閉口する。お礼を言って損をした。こいつはまた、とんでもない同族に出くわしてしまった。大きな赤い瞳が印象的な美魔族だが、それすら詐欺に思えるほどの無茶苦茶さだ。
……それから、しばらくして。
黒髪のチビ悪魔に座ることを許され、体の回復を待つ間。チビ悪魔はどこにいくでもなく、近くの倒木の上に座ってぷらぷらと足を揺らしていた。
一応、同族のよしみで『彼』がまた襲われないよう、見張ってくれているのだろう。とはいえ手持ち無沙汰なのか、あれこれと『彼』に尋ねてくる。おかげで『彼』は、こんなことになるに至った経緯のほとんどを、チビ悪魔に話すことになった。
「そうか。大型ギルドに住処を焼かれ、命からがら逃げ出してきたのか」
「そう、ですね。数えたわけではありませんが、50人はいたでしょうか」
だいぶマシにはなったが、まだ火傷が痛む。鈍く走った痛みに『彼』が顔をしかめていると、チビ悪魔は「ふーん」と頬杖をついた。
「50人とはなかなかだな。おぬし、災難じゃったな」
「……そう思うのなら、先程足蹴にしたことを謝っていただきたいのですが……」
「ん? 何か言ったか」
「いえ、何も」


