嘆息したアリギュラは、実に悪魔らしい冷めた目をキャロラインに向ける。それを見納めに、アリギュラは立ち去ろうとしたのだが。

「っ、!!」

 アリギュラは思わず息を呑んだ。キャロラインが、悪役令嬢が、紫水晶のような瞳を怒りに燃え上がらせて、静かに唇を噛み締めていたからだ。

「……前言撤回じゃ、メリフェトス」

「我が君?」

 すっと足を踏み出したアリギュラに、メリフェトスが小首を傾げる。それには答えず、アリギュラはうちから溢れ出す喜びにむずむずと顔をにやけさせた。

「目が節穴なのは、わらわも同じだったようじゃ」

 キャロラインは折れていない。こんなにも追い詰められて尚、戦おうと前を見据えている。握りしめた拳の気高さたるや。まっすぐな眼差しの美しさたるや。

 それでこそ彼女は、アリギュラの友だ。