(なんっなんですの、あの方は……!)

 聖女召喚の祝賀パーティも、残り時間わずかとなった頃。人目につかない物陰で、キャロラインはぜえはあと息をついた。

 剣舞の前ではうっかり涙してしまったキャロラインだが、その後もアリギュラ相手に勝負を仕掛けてきた。だが、ことごとく敗北をきした。

(というか、あの聖女様、ことごとく行動が想定外すぎますわ!!)

 キャロラインが魔獣の襲撃で故郷を追われた人々への慈善活動(チャリティ)を呼び掛ければ、指をパチンと鳴らして宝石――しかもそれは、ジーク王子に贈られたらしい――を山積みに差し出し、場をどよめかせたり。

 キャロラインが今日のためにとお抱えのパティシエに作らせた特大ケーキを給仕に運ばせれば、「わらわからも贈り物じゃ!」などと叫び、花という花を咲かせて人々を沸かせたり。

 先程など、ちょっと目を離した隙に兵舎に顔を出していたらしい。向こうで酒でも酌み交わしていたのだろう。何人かに見送られて戻ってきた聖女は、肩など組んで、兵らとすっかり打ち解けた様子だ。

 これだけ見ると、型破りで破天荒な、ただのお騒がせ令嬢だ。ところがアリギュラの場合、そんな小さな枠に収まらない。