わっと歓喜に沸く人々の頭上を、七色の虹が駆けていく。それは、聖剣の切っ先から生まれている。

 キャロラインは後に知ったが、虹はホールを抜けて城の外にまで伸びた。それは、祝賀会に合わせて宴を催していた兵たちの鍛錬場や、同じく祝杯ムードに湧く市井の上を駆けた。

 突然頭上に伸びた虹色の橋に、兵も民衆も、何事かと空を見上げた。そこから、ホールから語り掛けるアリギュラの声が降ってきたという。

「聞こえているか、エルノアの民らよ」

 胸に手を当てて、異世界から来た聖女は静かに語り始めた。

「わらわは、そなたらを誇りに思う。今日までよくぞ耐えてきた。生き延び、この世にしがみついてきた。じゃが、敢えて言おう。おぬしらに、もう二度と怯える夜は来ない」

 アリギュラの声には、不思議な力がある。誰もが声一つ発さず聞き入る中、聖女はかっと目を見開き、声を張った。

「そして兵士たちよ! エルノアの勇者たちよ! わらわは、おぬしらと共に戦うためこの地に招かれた。もう何も恐れるな。何にも震えるな。わらわがいる限り、勝利はおぬしらの頭上に輝く。だから進め。愛する者も守るために。信じる者を救うために。生きて笑うのは、誇り高きエルノアの勇者である!!」

 うおぉぉぉぉ!!と。兵隊の鍛錬所の方角から、勢いよく雄たけびが聞こえた。パーティ会場に居合わせた騎士たちも、胸に手を当てて目を潤ませている。