王太子ジークの婚約者、キャロラインの出身であるダーシー家により、急遽催された『聖女召喚、祝賀パーティ』。その裏には、魔獣襲撃により疲弊したエルノア王国の現実がある。

 数百年前に封印された魔王サタン。それが復活をしたのは、3年前のことだ。

 以来、魔王は魔獣たちを従え、領土を拡大せんと人間の国を襲い続けている。その波が、ここエルノア国にも押し寄せているのだ。

 日増しに増える、魔王軍に集う魔獣たち。急襲に次ぐ、急襲。先の見えない戦い。故郷を焼かれて逃げてくる人々もいる。そんな惨状において、食物も金も国庫からどんどん消えていく。

 そんな惨状の中、王国に多大な援助を行っているのが、キャロラインの生家ダーシーだ。

「王都が安泰でいられるのは、ダーシー家の支援のおかげだな」

「麦も、羊も、じゃがいもも。すべてダーシー家が調達してくれたそうじゃないか」

「今日の料理も、ほら。トマトをふんだんに使った、ダーシー家のある南部の味付けよ」

「お嬢様も、王太子様の婚約者としてご公務に励まれているし……。まったく、ダーシー家さまさまですな!」

(そうですわ!! もっと皆さま、言ってくださいな!)