ここは、人間どもの宗教の施設なのだろう。大理石の床が無駄にぴかぴかに磨き上げられていて、うっすらとそこに自分の姿を映っている。それがちらりと目に入った途端、アリギュラは仰天し、びたんと手をついて床にかじりついた。
つんと尖った耳は丸みを帯び、黒かった結膜は白く変わっている。対峙するだけで相手を畏怖させるとまで言われた圧倒的美貌からは、なぜか凄みが薄れている。目は若干丸くなり、頬にも柔らかさがプラス。与える印象はほんの少し幼くなり、これではただの美少女である。
そう、美少女。艶々した黒髪に、白い肌。ぱっちりとした瞳に、ふっくらとした唇。まがうことなき人間の美少女が、そこにいた。
「お待ちしておりました、聖女様!」
「お会いできてうれしゅうございますっ」
「聖女さま」
「聖女様!」