眉をしかめて、メリフェトスは外に視線をやった。ローナ聖堂では朝と夕に一度ずつ、礼拝者のためのミサを開いている。そのミサに合わせて、聖女の力による癒しを求め、病める人々が大勢集まるのだ。

(また、聖女の力を借り受けするしかあるまいな)

 先ほどまで頭の大半を占めていた煩悩を瞬時に追い払い、メリフェトスは胸に手を当て頷いた。

「聖女様をお連れし、私もすぐにそちらに向かう。ミサが終わり次第、皆に聖女様の祝福を与えよう。そのつもりで、いつも通り場を整えておくように」

「かしこました!」

 頷き、伝令役は駆けていく。その背中を見送ってから、くるりとメリフェトスは踵を返した。

 ……キスを求めたら、今日はどんなお顔を見せてくださるだろうか。追い払ったはずの煩悩が再び忍び寄ってきて、メリフェトスは慌てて首を振った。

 これはもしかすると、試練の時かもしれないなと。

 メリフェトスはぼんやりと、そんなことを考えたのだった。