秒速ファシネイト





その瞬間、一条凪の手が私の後頭部にまわされて



ぐいっと強い力で引き寄せられた。




こつん、とおでこが一条凪の胸にぶつかる。





「いいいい、一条凪!?」




なにこの体勢!?




「…去年の冬、雨の日」




反射的に離れようとした私の頭をぎゅっと抑え込んで、話し始める一条凪。





「テストの結果がすごい悪くて、これじゃー家帰れないなって、公園で落ち込んでたら雨降ってきて。しかも、すごい土砂降り」



「…ちょ、ちょっと待って!なんの話…?」



「うーん、俺の昔話?」





このタイミングでなぜ!?




だけど一条凪は話をやめる気も、私を離す気もないらしい。





私を腕の中に捕獲したまま続ける。





「でも、もうどーでもいいやってびしょ濡れになってたら、急に知らない女の子が立ってて。

この傘あげるって、自分がさしてた傘差し出してくんの」