「な、なんっ、ど、どこに…」 「俺んち」 「は!?ていうか、あ、雨だし…!」 「大丈夫、傘、かしてあげるよ」 全然大丈夫じゃない。 なんにも大丈夫じゃない。 肌にあたる雨の感触なんて、感じないくらい ――一条凪につかまれた手首以外ぜんぶ、麻痺してる。 「…教えてって言ったの、木村さんだから」 一条凪の私の手首をつかむ力が、ギュ、とわずかに強まった気がした。