「私、トイレに寄って行くから、千紗は先に行ってて!」
廊下の突き当たり、曲がり角に差し掛かった所でそう言うと、千紗は「了解っ」と返事をして左側へ、私はトイレのある右側へと曲がる。
千紗の方を見ながら曲がった所為で、曲がった瞬間に足を滑らせてしまった。
「わっ、」
私の声で何人かの生徒が振り返ったものの、かろうじて転ばずに済んだお陰で、それほど目立たずに済んだ。
それでも恥ずかしいことに変わりはなくて、早くトイレに駆け込もうとした時、クツクツと小さな笑い声が聞こえた。
声がした方を振り返ると、古川先輩が「一人で何やってんだか」と、独り言の様に洩らした。
「もしかして、今の、見てたんですか……?」
私の問い掛けに、「ばっちりと」と答えると、続けて「恥ずかしいヤツだな」と言って、私を馬鹿にした。

