そろそろ昼休みも終わりかけて、少しずつ三年生が戻ってくる中、居心地の悪さを感じながら廊下で先輩を待つ。


感じの悪い人だと思ったけど、見ず知らずの私に貸してくれるなんて、意外と親切な人なのかも……。


足元の上靴に視線を落とし、極力、すれ違う先輩たちの視線を気にしない様にしていると


「……まひる?こんなトコで、何やってんだ?」


今頃になって、やっとセイ兄が現れた。


「セイ兄!どこ行ってたの?習字道具を借りようと思って来たのに!」


「どこって、職員室だけど?とりあえず、今すぐ持ってくるから待ってな」


千紗、凄い!本当にセイ兄も持ってた!


――なんて感動に浸ってる場合じゃなくて、教室に入って行こうとしたセイ兄を慌てて引き止める。


「待って!もう良いの、大丈夫だから!」


「は?何で?」


他に貸してくれる人が見つかったから、と答えようとしたけれど、やっぱりセイ兄に借りようかな?と、少しだけ迷う。


その方が気楽だし。うん、そうしよう!


「やっぱり「――ほら、コレ」


セイ兄の習字道具を貸して!と続けようとしたその時、さっきの先輩がセイ兄の後ろから、書道セットを私の方へと差し出してきた。