相手の態度にカチンときたけど、仮にも先輩相手に文句を言う訳にもいかないし、今更何事もなかった様に引き下がる気にもなれなくて。


つい勢い任せにそんなことを口走ってしまったけれど、そんな自分に自分でもビックリしてしまう。


何で、よりにもよって、こんな人から借りようとしてるんだろう?


きっと、何言ってんだコイツ、みたいに嫌な顔をされるのがオチで、それならこのままここでセイ兄を待ってる方がまだマシだ。


「てか、持ってる訳ないですよね!!すみません、やっぱり結構ですっ!」


ブレザーから離した手を、胸元でブンブンと勢いよく左右に振る。


「……ちょっと待ってな」


「えっ、ちょっ……」


さっきの様子なら、持っていたとしても絶対に貸してくれなさそうだと思ったのに。


面倒くさそうな態度ながらも、先輩はスタスタと習字道具を取りに行ってしまった。