「……あれ?まひる今日、出掛けんの?」


よく晴れた日曜の朝、洗面台の前で鏡とにらめっこしていた私に、顔を洗いに来たセイ兄が背後から声を掛けてきた。


イエローのシャーベットカラーを取り入れたカットソーに、シフォン素材のプリーツスカート姿から、いつもより少しだけ気合が入っていることを見抜いたらしい。


「うん!今日はメリーゴーラウンドを見に行くんだー」


弾んだ声で返事をしながら、洗面台の前をセイ兄に譲る。


「豊島園?」


廊下からは、あさ兄の声が聞こてきた。


「朝陽……何で、そこで豊島園なんだよ……」


「静夜、知らないのか?あそこには、現存する日本最古のメリーゴーラウンドがあるだろ?あ、これは昔の父さん情報だけど。そこで母さんとデートしたらしい」


今では、こうしてごく普通に、お父さんやお母さんの話をするようになった。