「お盆に偶然、母方の親戚だという人に会って、試しに訊ねてみたんです。そしたら、一度も会ったことのない俺に、そんなことをする奇特な人間はいないだろって一笑されただけでした……」
黙って話を聞いていたけれど、そこで思わず「そんな……酷いっ」と声を洩らしてしまった。
だけど、深月先輩はそこで初めて、もしかしたらと思ったらしい。
見れば、封筒の消印はバラバラとはいえ、どれも都内で、綺麗に整っている文字はそれでも男性と判るもので。
疑惑が深まる一方で、その反面、そんなはずはない、それだけはあり得ないと反発する気持ちでいっぱいだったという――つい、さっきまでは。
「……なのに、本当に想像通りで……想像通りなのに、すみません、どう言えばいいのか……」
組んでいる先輩の手の指先が白くなっていて、酷く緊張し切っていることが見て取れる。
「いくらか減らしてしまったんですけど、その分はこれから少しずつお返しします。今までお礼も言えず、すみませんでした」
深月先輩はそう言って、再び深く頭を下げた。

