「あ、ごめん、間違えちゃった」
たまご焼きを作る時は、今でも深月先輩のことを思い出す。
甘い味付けのたまご焼きを、懐かしい味だと言ってくれて、だけど、だし巻き方が好きだと言った深月先輩。
そんなことを思い出してしまった所為で、今日のたまご焼きはいつもと違って、無意識にだし巻きを作ってしまった。
そんなことを知る由もないセイ兄は「俺、こっちの方が好き」と無邪気に言い、再びたまご焼きに箸を伸ばした。
「……そうなの?」
「俺は甘いの、元々そんなに好きじゃねーし。朝陽もだろ?」
セイ兄が、隣に座っているあさ兄に振った。

