どこか遠い所を見つめる様な眼差しは、いつかの深月先輩のそれと重なった。
学校で、デートで、たまにふと見せたあの眼差し。
深月先輩のあの眼差しは、きっと今のあさ兄と同じで、忘れたいと思える様なこの過去の記憶を見つめていたんだ。
「だけど、運転していたのは紛れもなく父さんで、父さんの運転ミスであの事故が起きたんだから、彼には恨まれても仕方ないのかもな……」
こんな時、あさ兄はやっぱり大人だと思う。
私なんて、自分から訊ねておきながら、気の利いた言葉一つ出てこない。私には、あさ兄の言葉に黙って耳を傾けることしか出来ない。
「静夜は、父さんが亡くなったのは、古川くんのお母さんの所為だって思いたかったんだろうけど、そう思ったところで、彼の母親も亡くなっているし……」
やり場のない気持ちを古川くんの所為にしてるってだけで、本当はあいつも、自分で判ってると思うよ、と私に力なく微笑んだ。
「だったら、そんなの……っ」
ただの八つ当たりじゃない……って、とっさにそう言いそうになったけれど、私なんかがそんな簡単に言える様なことじゃない。
セイ兄の気持ちも、深月先輩の気持ちも判る。ううん、本当は私なんかに判るはずもないだろうけど、でも少しは判る気がするから――。

