あとちょっと、あとちょっと、が積み重なって、どんどん欲張りになってしまう。 胸がきゅぅ……って締め付けられて、抱き締める手に力を込めたその時――。 「ま、ひる……?」 今度は耳元なんかじゃなくて、背中の方から私を呼ぶ声が聞こえた。 その声に弾かれた様に、反射的に深月先輩から身体を離して振り返る。 「セ、セイ兄……っ」 そこには、冷ややかな怒りを露わに、深月先輩を睨むセイ兄が立っていた――。