「じゃあ、下に行くか。……と、その前に、何か言おうとしてた?」 相変わらず、私の声を聞き逃さないあさ兄が、ん?と訊ねてくる。 気持ちが削がれて、やっぱりまたの機会にしようと思い直した。 「あ、ううん……何でもない」 「そう?それなら、とりあえず今はご飯を食べに行こう」 立ち上がったあさ兄が、私の腕を引っ張って起き上がらせてくれる。 部屋を出て行こうとするあさ兄にくっついて、黙って後ろを歩く。 すると、ドアノブに手を掛けたあさ兄が歩みを止め、突然振り返った。