「――あさ兄、私、不幸になんてならないよ」


布団の中に潜ったまま、あさ兄に向かって話し掛けた。


「自分を不幸に出来るのは、自分自身だけなんだよ?」


お母さんがいなくても、お父さんが亡くなっても、一度だって自分を不幸だと思ったことはない。


だって、本当に不幸なんかじゃなかった。


クラスメイトや近所の人たちは、口を揃えて「可哀想に……」って言っていたけれど、心の中では可哀想なんかじゃないのにって思ってた。


悲しかったけど、寂しくはなかったし、ましてや自分が不幸だなんて感じる瞬間さえなかった。


だって、私にはあさ兄とセイ兄がいてくれたから。


二人が大切にしてくれてたから。そのことが、ちゃんと伝わってたから。