「近所迷惑って言うより、恥さらしだから、今すぐその馬鹿みたいな会話は止めてくれる?」
反論を許さないセイ兄の、容赦ない物言いに気圧されそうになったものの、ふと思った。
「元はと言えば、セイ兄の所為でもあるんだからね!」
「まひる、それダジャレ?」と横から飛んで来た、あさ兄の下らないツッコミは聞こえないフリで無視をする。
一番頭にくるのはあさ兄だけど、その原因を作ったセイ兄にも、せめて責任の一端くらいは担ってもらわないと気が済まない。
私の言葉に、「は?」と眉を顰めながら、セイ兄は制服のネクタイを緩めた。
ブレザーは、私と同じチェスナットブラウンだけど、女子はクリムゾンレッドのリボンなのに対し、男子はジェードグリーンのネクタイを着用している。
その色鮮やかな緑色を見つめながら、三年前まではあさ兄もセイ兄と同じ、この制服を着ていたことを思う。
私とあさ兄は、年が5つ離れているから、中学も高校も学校生活が重なったことはない。
だけど、セイ兄と私は学年で1つしか離れていないから、私の学校での様子はセイ兄を通して、いつもあさ兄に知られてしまう。
だから、思わずにはいられない――どうせなら、セイ兄とは4つ以上、年を離して産んでくれれば良かったのに……!と。

