普通の人なら、この笑みに騙されてうっかりと口を滑らすのだろうけど、私だって伊達に十六年間もあさ兄の妹でいる訳じゃない。
「それは、ちゃんと付き合うことになったら、その時に教えるね?」
笑顔でかわして、部屋へ行こうと立ち上がった私の手に、あさ兄が自分の手を重ねて阻んだ。
「まひる。そうなってからだと遅いから、今訊いてるんだよ」
「……“遅い”?遅いって何?やっぱり何かする気なんでしょう!?」
信じらんないっ!あさ兄の馬鹿!!と、あさ兄を詰る。
「何もしないよ。ただ、同じ男としてどうなのか見極めるだけ」

