「な、なかなかのハスキーボイス、だよね……」 空しく笑う私をチラリと一瞥したあさ兄は、可愛い妹がこんなに必死だというにもかかわらず、どこまでも騙されてくれる気はないらしい。 「とりあえず、この件は家に帰ってから、じっくりと聞かせてもらうから」 まずはまひるが風邪をひく前に帰ろう、と言って、自分のジャケットを脱いで私の肩に掛けた。 どうして、こういう優しさを少しでも別の方に回してくれないんだろう……。 大きめのあさ兄のジャケットを羽織ながら、大きなため息を吐き出した。