そんな共通点が嬉しかったから。


だから――。


「セイ兄が好きで、たまに一緒に聴いてるんです。元はと言えば、お父さんが好きだったみたいなんですけど」


迂闊にも、何も考えずに発してしまった私の言葉に、深月先輩の(まと)う空気が変わったのが判った。


だけど、セイ兄ほどあからさまではなくて、先輩は静かにCDを棚に戻すと、その手を私の頭の上に乗せた。


「次は?」


怒っている訳でも、不機嫌になっている訳でもない、ただ淡々とした口調の先輩。


やっぱり先輩も先輩で、セイ兄のことが嫌いなのかもしれないと、少しだけ寂しい気持ちになった。


二人の間に何があったのか知りたいと思う気持ちはあるけれど、別にそれは今日じゃなくても構わない。


何より、せっかくの初デートなのに、変な雰囲気になるのが嫌で。


「次は、ここを出て少し行くと、美味しいクレープ屋さんがあるんです。そこのクレープが食べたいです」


何も気にしていない素振りで、先輩に明るくそう告げた。