心臓がバクバクして、先輩を追いかけることさえ出来ずにいる私に、突然、深月先輩は足を止めて振り返った。


「何してんだよ?CD、選んで欲しいんだろ?」


こっち、と先輩が顎で別のジャンルのコーナーを示した。


慌ててその背中を追うと、先輩が向かった先は洋楽のコーナーで。


先輩はサラッとその辺を眺めると、ランキングにも入っていないアルバムを一枚手に取った。


それは、イギリスの男性ヴォーカルのアルバムだった。


「その人、知ってます!」


思わず、テンション高くそう口にすると、深月先輩は、「まひるも、こういうの聴くんだな」と、どこか嬉しそうに笑った。


洋楽は殆ど聴かない私でも、その歌手を知っているのは、セイ兄がたまに聴いているから。