「葵、お前なんでそんなに肌真っ赤なんだよ」

 「あー、ちょっとな……」


 土曜に西さんと海に行って、互いの想いを伝えて、恋人になって。

 そこまではよかったのだ。

 彼女は万全の日焼け対策をしていたのだけれど、季節は夏。海やアスファルトの照り返しで俺の皮膚はほとんどやけどのようになってしまった。日焼けなんて可愛いもんじゃない。風呂に入るたびに全身、特に首と腕、それから脚に大量の水がしみ込んでいるんじゃないかと思うくらいの痛みが走る。


 「馬鹿なことしたね。私が日傘に入るかって訊いたらいらないって答えたの、間違いだったね」

 昼休みに栗ちゃんと話していたはずなのに、いつの間にか俺の背後に西さんがいた。

 気配、何も感じなかった。超コワい。


 「あ、ちょ、西さん」

 「西さんじゃなくて?」

 「華、香……」


 両肩に手をおかれ、呼び方を訂正される。一度染み付いてしまったクセはなかなか抜けなくて、俺はあれから、何度も何度も彼女に注意されていた。


 「なぁお前ら、付き合うことにしたのはいいけどさぁ、オレの目の前でいちゃつくなよ。つーか、西は日直の仕事いいのかよ」

 「相方の人がやってくれてるよ。私も昼休み一緒に職員室行くって言ったら、『宗谷に怒られそうだからいいわ。西さんは放課後の掃除リーダーやってよ』って言ってもらったんだ」


 天使も驚くような輝く笑顔を浮かべる西さん。

 それを見た栗ちゃんが悔しそうに葵ガードかよ、とつぶやいた。